Problems クライアント課題
クライアントである自動車部品メーカーでは、業績低迷が続いており、構造変化が求められる状況に直面していた。海外工場を含む子会社それぞれで異なるシステムを使用していたことからデータの統合ができておらず、各工場・ラインにおける収益・原価構造等のデータが可視化できていないことが深刻な問題であった。迅速な経営再建が求められる中、グローバル統一のERPパッケージ導入によるデータドリブン経営を目指し、本プロジェクトがスタート。
Process プロセス
本プロジェクトは、構想段階を含め約4年の期間で実施。市場と比較しても迅速なスピードで進行する必要がある中での、支援内容は以下の通り。
1. システムアーキテクチャの設計とグローバルテンプレートの構築
ERP導入に際し、グローバルテンプレートの構築を担当。
会計モジュールを軸足におきつつ全モジュールとの連携を進め、グローバル共通の仕様を策定。
2. Business team側の窓口として開発ベンダーとのフェイシング
実際の開発を担うベンダーの選定や開発工程のハンドリングをBusiness teamの立場で担当。
ベンダーと密な連携をとり、課題発生時の迅速な対応を支援。
3. チーム間の連携促進と会議体の運営
モジュールや事業領域ごとに細分化されたチーム間の連携を促進。
定期的な会議体の運営により、各部門のニーズを取りまとめ、プロジェクトの整合性を確保。
4. マスタ体系の整理とデータクレンジングの実施
システム導入に伴うデータクレンジングやマスタマネジメントシステムの整備を実施。
正確なデータ管理基盤を整えることで、効率的な運用をサポート。
5. 海外現地子会社への落とし込み
海外子会社に対し、標準化されたグローバルテンプレートを展開。
現地担当者の理解を促進し、オペレーションへのスムーズな落とし込みを支援。
現地ベンダーと協力しながら、各国の税制要件や商習慣に対応したローカルテンプレートも整備。
6. 費用対効果の可視化とステークホルダーへの説明
導入効果や投資対効果について、現地視点とHQ視点の双方から成果を可視化。
フェーズゲートごとに経営層やステークホルダーに対し、具体的な成果と価値を説明。
Result 成果
タイトなスケジュールの中でもERP導入を予定通り完遂。
経営再建に向けた一歩となる、グローバルで統一されたデータ基盤の確立を実現。
これにより、海外子会社を含む全体の業務の高度化・作業効率の向上に寄与。
Interview 担当者インタビュー
担当者 藤村 拓弥
香川県出身。
アカウンティング/ファイナンス領域の知見をバックボーンに、中期経営計画の策定からERP導入支援、資本政策に至るまで、多岐にわたるプロジェクトに参画。概念レベルの議論からディテールの設計まで、一貫して推進できる広範な知見と豊富な経験が強み。クライアントやステークホルダーとの丁寧なコミュニケーションを重視し、円滑なプロジェクト進行を支援する。仕事中はラジオを聴いて集中力を高めている。
-大規模プロジェクトの関門はいくつもある-
今回のプロジェクトで最も難しかった点はどのようなところでしたか?
難所はいくつもありましたが、やはり商習慣の異なる海外子会社へのグローバルテンプレートの展開フェーズは、一筋縄ではいきませんでした。
今回ERP導入に際し、海外子会社における業務全体のワークフロー承認プロセスを、国内と揃える形で整備する必要がありましたが、現場においては、既存の仕事を大きく変える必要が生じたり、業務量を一部増やしてしまうことになったりと、ハレーションを生みかねない状況にありました。ERP導入に当たって、こういった業務の変革が起こることは不可避なことではあるものの、海外法人となると、どうしても商習慣が異なることもあり、単純に本社方針だと押し切って理解を得るということには限界がありました。
また、これもERP特有のことかもしれませんが、どうしてもその性質上、費用対効果を定量で語りにくい部分があるため、株主様をはじめとする各ステークホルダーからご承認を得る段階でも苦労しました。費用対効果を最大限可視化していくこと、また現地からみた効果およびHQとしての効果を、定性的な面も含め双方から整理したうえで、各フェーズゲートに臨みました。
-丁寧なコミュニケーションが打開の鍵-
こうした難所をどのように乗り越えたのでしょうか?
まず、現地にもわかりやすくシステムアーキテクチャを説明できるようなドキュメンテーションの整備を行い、グローバルテンプレートの意義や利点を真摯に伝えることに注力しました。
また、最も力を入れたのは綿密かつ、相手の立場に立ったコミュニケーションですかね。
「グループガバナンスの強化のために協力してほしい」という正論だけでは響かないと思い、現地担当者の感情や受け取り方をケアしたうえでのコミュニケーションを徹底しました。
具体的には、どのようにコミュニケーションを意識していたのですか?
まずは普段のコミュニケーションの中で、自身の現地法人における業務理解を進めていくことを徹底しました。現地業務の内容・方針にできるだけ理解を示し、その上でシステム導入の有効性を伝えられるように意識しました。
そもそもERP導入においては、最終的には展開先の現地法人の担当者との綿密な連携が重要です。オペレーション側が新システムを受け入れ、業務を標準化していかないとプロジェクトのビジョン・目的を達成することができません。
今回、海外子会社50社以上とやりとりする中で、指示の受け取り方が国によっても全く違う、ということにも気がつきました。それを踏まえ、より現場に寄った伝え方が求められることを感じ、このようなコミュニケーションを意識していました。
こういった意味で、各法人・部門との連携においては、最終的に潤滑油的な役回りができたのではないかと自負しています。
定量効果を示しにくいプロジェクトということですが、フェーズゲートごとの承認はいかに獲得していったのでしょうか。
費用対効果については、定量的な指標だけでなく、業務の高度化や標準化、リテラシー向上といった定性的な側面についても丁寧に資料化しました。これにより、各フェーズでの承認をクリアし、最終的にERP導入を完遂できました。現在は保守運用フェーズに移行しており、安定した運用が続いています。
-強みは“戦略的思考”と“コミュニケーション力”-
このプロジェクトにおいて、ご自身の“強み”はどのように活かされましたか?
大きく2つあって、まず1つ目は自分の専門領域がERPのようなシステム系ではなかったこと、2つ目がコミュニケーション部分かなと思います。
自分は今でこそ、ERP関連のコンサル実績も積んでいますが、もともとは会計や戦略系をメインとしたコンサルティングが中心でした。
今回PMOとしては、別のシステム系のコンサルファームさんが入られていましたが、“システム専門ではない”という目線で課題を整理し、構造化した戦略を立て、連携していったことで、結果的にプロジェクトの進行スピード向上に貢献できたように感じています。
「システム利用者側」の目線に立った資料作成と説明ができたため、特に、上層部への上申の際は重宝されたように思います。もちろん、細部や、テクニカルな部分においては、エンジニアの方々に非常に助けられました。
また、コミュニケーションの面では先ほどの通りですが、今回スケジュールもタイトで、ピリッとした雰囲気もある中で動いていましたが、エンジニアや他のコンサルタントとの連携を密にしながら、自分が潤滑油的に動くことで、各フェーズで柔軟に課題解決を行えたと感じています。
特にグローバルテンプレートの作成の中では、モジュール・事業領域ごとに細分化されたチームがある中で円滑にプロジェクトを進めるため、定期的に会議体を設定し、迅速にエスカレーションによって信頼を得ることができました。
-大切にしている信念とは-
本プロジェクトによらず、普段の仕事で大事にしているポリシーは何ですか?
目の前にある課題、特に誰かが放置しているような課題を見逃さず、積極的に拾い上げることを心掛けています。
複雑で手を付けにくい問題ほど解決する価値が大きく、それを乗り越えることで得られる学びは、自身の成長を加速させる原動力になると考えています。さらに、こうした姿勢がプロジェクト全体に対する信頼感を高め、周囲の協力を得るための基盤になっていることを実感しています。
新たな課題への挑戦で得た知識やスキルを次のプロジェクトに活かし、常に前向きに取り組む姿勢を大切にしています。
-今後の展望-
今回の経験を踏まえ、今後はどのような目標をお持ちですか?
ERPを軸にしつつ、会社全体のDXの推進にも関わっていきたいと考えています。
攻めのデジタル戦略を展開し、企業全体の成長に貢献していきたいです。
ここ数年で一気に、デジタル化のニーズはさらに高まっており、コンサルタントにおいても、システムとビジネス戦略を融合させたソリューション提案スキルが求められています。
先出の通り、自分のコンサルティングにおける得意領域は会計・戦略系分野でしたが、ここの強みを活かしつつも、最新の技術と知識を取り入れながら、さらなるコンサルティング価値を提供し続けていきたいです。