Problems クライアント課題
クライアントであるシンクタンクのSaaS代理店事業では、マーケティングの専門知識が欠如していた。100以上のシステムを取り扱い、各システムの担当者がセールスとマーケティングを兼務する状況にあったが、専門的なマーケティング戦略を策定するリソース・ノウハウがなかった。同グループ・別事業における既存顧客への営業に頼る形で収益を上げていたが、競合の直販や他代理店との競争が激化する中で、新規顧客を獲得する必要性が高まり、本プロジェクトはスタート。
Process プロセス
新規顧客の獲得と既存顧客との長期的な関係構築を目指し、以下の施策を展開。
1. 上流工程の設定
●全体マーケティング戦略の設定と共通認識の醸成
●各々のシステムに対するペルソナ設定
●カスタマージャーニーマップの作成
2. 具体的な施策
●デジタルマーケティング戦略の策定・ツール導入支援・クリエイティブの活用等
・Web広告の運用:ターゲット層への認知を拡大
・MA・CRMの導入:見込み客のスコアリングと管理を効率化
・セミナー開催:グループ他社との連携による見込み顧客母集団の拡大、アプローチの多角化
・オウンドメディアの立ち上げ:既存顧客との接点を持続
3. 施策の効果検証
各システムに個別のマーケティング戦略を適用することで業務を体系化し、セールス担当者が取るべき具体的な行動を明確化。また、広告やセミナー設計・運用は担当コンサルタントが内製で運用支援。取り組み開始から約1年で成果が現れ始める。
Result 成果
定量的な成果
問い合わせ数が前年対比で120%増加
サイトの月間平均PVが前年平均比120%増加
定性的な成果
・マーケティング戦略の体系化により、セールス担当者の行動指針が明確に。
・カウンターパートが、より緊急度の高い案件に集中できる環境を構築。
Interview 担当者インタビュー
担当者 中藤 宏平
広島県出身。
Webマーケティングとブランディングの豊富な経験をベースに、マーケティング支援からブランド構築まで多様なプロジェクトに参画。大局的な戦略策定から細部の実行支援まで、一貫して推進できる広範な専門性が強み。クリエイティブな発想と戦略的思考を融合させたアプローチを心がけている。クライアントの目標達成に向けて、革新的なソリューションを提供することに情熱を注ぐ。休日はクラフトビールを楽しんでいる。
立ちはだかる変革の壁
今回のプロジェクトで最も難しかった点は何でしたか?
一番の難所は、プロジェクト初期の上流工程の設定だったかなと思います。
そもそも、この事業のマーケティングチームでは、マーケティングが専門ではないメンバーが、他業務との兼務で対応しており、各製品のターゲット像やペルソナすら明確ではありませんでした。それを可視化していくプロセスが必要だったのですが、すでに日々の業務で忙しい担当者たちを巻き込む必要があり、時間もリソースも限られていました。
また、製品数が非常に多く、どんどんそれが増えていく。それぞれに関わるセールス担当者が自主的にマーケティング活動を行っている状況もありました。組織も大きかったので、全体を一気に整理し、方向性を統一するのは現実的ではなく、徐々に調整しながら進めていく形を取るしかありませんでした。この過程での合意形成や優先順位の調整が大きな課題でした。
困難突破の鍵とは
そうした難所を乗り越えられた要因は何だと思いますか?
アジャイル的な手法が成功要の一つかなと思います。とにかく試し、効果検証含めて短期で回し続けること。ちょうど、SaaS販売事業ということで、この手法は組織的にもマッチしていました。
例えば、セミナーも大体同じような構成で、同じようなことをやりがちだと思いますが、一個でも何か手法を工夫してみる、そしてすぐにその効果検証してみる。こういった地道なことを重ねて徐々に道を開いていきました。
あとは、関係者全体を巻き込むことも大事にしていました。大企業であることによる制約がかかる一方で、対象部署が対外的には主要事業ではないことから、マーケティング手法として有効な武器であるはずの“知名度”をフル活用できない状況でした。
そこで、別部署やグループ会社と連携し、共同でセミナーを実施することで、プロジェクトへの関心を広げ、社内外での集客効果を高めました。このように、グループ内での連携も強まり、関係者が少しずつ成果を実感できる形で進めたことが、最終的に成功につながったと思います。
自身の強みが光った瞬間
このプロジェクトにおいて、ご自身の“強み”はどのように活かされましたか?
私の強みは、マーケティング領域での守備範囲が広いことかなと思います。
戦略策定の上流工程から、具体的なWEBマーケティングの戦略と実行、さらにはクリエイティブの制作まで、一貫して対応できる点は、今回のプロジェクトにおいても一気通貫で携わって支援できている点に活かされていますね。
また、これは本来のご依頼目的とは外れますが、クリエイティブ制作も自身で行えるため、そういった意味では、クライアントが期待していなかった分野でもバリューを提供できているのではないかと思っています。
お客様と相対する際のスタンス
お客様への対応や接し方で意識していることはありますか?
ここは、柔軟にお客様に合わせますね。
今回のアジャイル的な進め方は、システム関連の会社には浸透しているので、このやり方がフィットしましたが、リスクヘッジ重視で、「失敗をしたくない」というクライアント様もいますので…
大切にしている信念とは
本プロジェクトによらず、普段の仕事で大事にしているポリシーは何ですか?
私が大事にしているのは、「お客様の“期待値”を把握し、それを超える成果を目指すこと」です。わざわざ改めて言うことではないかもしれませんが…。
ただ、やはり期待値を見誤ると失敗につながりますし、いきなり超えすぎても意味が伝わらなくなるため、ちょうど良い、期待値と提案のバランスを取ることが重要です。
そういった“期待値”はどのように把握しているのですか?
一度の面談だけでは期待値を正確に理解するのは難しいため、プロジェクト初期からお客様との対話を重ね、期待値を探っていきます。あくまでも「期待値」なので、すり合わせていくようなことではない。
ですので、なかなか把握が難しい時はこちらから探ってみることもありますね。
例えば、「こちらのスタンスはこのように考えていますが、どう思われますか?」といった形で明確な基準を提示し、意見を伺います。そのプロセスを通じて、双方の認識が一致したところからスタートできるよう心がけています。
今後の展望
今回の経験を踏まえ、今後はどのような目標をお持ちですか?
現在、引き続き本プロジェクトに伴走させていただいている状態なので、まずはプロジェクトの更なる発展に寄与していきたいです。現状のプロジェクトにおける今後の展望としては、“マーケティングをしなくても顧客を獲得できる状態”を目指す“ブランディング”を強化していきたいですね。
また、個人的な展望としては、さらに幅広い業界・ジャンルでのプロジェクトにも挑戦していきたいです。
製品マーケティングだけによらず、もっと上流である、ブランド全体のマーケティングや、企業ブランディング等、自分自身の視野を広げ、どのような環境にも対応できるコンサルタントとして成長していきたいと思います。